DATE : 2007/03/09 (Fri)
母乳栄養は母親にとっても利点がある。授乳の際分泌されるホルモンには気分を落ち着かせる効果があり、育児に前向きな気分を感じさせる。
出産のでき るだけ直後から母乳栄養を行うと、分泌されるオキシトシンが増加するため子宮復古を促進し、出血を抑える。母乳を生成するのに脂肪が消費されるため、ダイ エット効果もある。頻繁に授乳している間は排卵や月経の再開が遅れ(乳汁分泌無月経症候群参照)、妊娠しにくい。そのため、母親の貯蔵鉄を回復し、子供が授かる間隔が自然になる。母乳栄養を行った母親は、出産後骨の再石灰化が進むことも知られている。閉経前後を問わず、卵巣腫瘍や乳癌のリスクが減少することも知られている。
授乳によってホルモンが分泌され、育児に対して前向きになり、母子の絆が強くなる。母子の絆はとても重要で、80%の母親がマタニティブルーを経験しているが、ほとんどの場合軽度のものですんでいる。母乳栄養を成功させるには、パートナーのさまざまな援助が重要である。そうすれば父子の絆もまた強くなることであろう。
母子栄養は、パートナーと子供との間の人間関係に 大きく影響しうる。父親によっては、奥方が授乳している間、のけものにされているような感じを味わうことがあるようだが、授乳の一部始終を見、家族の絆を 強化する機会だと感じる父親もいる。おそらく授乳は出生に関わる健康問題と並んで長時間を要する。母親の時間が減る分、父親と家族にとってはやらなければ ならないことが増え、プレッシャーになる。多くの父親はわりとその点のサポートを嫌がらないので、却って家族の絆が強まるのである。
「嘆きのボイン」月亭 可朝(1969年12月発売、80万枚の大ヒットに)は妻の愛情とその母性と女性性の象徴である乳房が子供に独占されたことを嘆く歌であり、当時大きな社 会的反響を生んだ。2004年妻の愛情が子供に向かうことに嫉妬した夫によって妻が刺殺される事件が起きている。
母親が不在の間も、予め搾乳しておいた母乳を用いれば母親以外の養育者の手で母乳栄養を行うことができる。もっとも、不在時間分の母乳を予め搾乳し 保存できるだけ乳の出がよくないと無理があるし、母親が養育者と引き離されている場合もうまくいかないだろう。これらの場合は養育者は一時的にか恒久的に か、他の手段を探さざるを得ない(人工栄養、混合栄養、他の母親の母乳の利用等)。
現在ではさまざまな搾乳器があり、購入する事もレンタルすることもでき る。これによってワーキングマザーも母乳だけでわが子を育てることが可能になった。
DATE : 2007/03/09 (Fri)
- 乳房から直接飲む場合、母乳はいつでもどこでも体温にあたためられた状態で飲める。
- 母乳を飲んでいる子は乳幼児突然死症候群 (SIDS) 等の危険が少ない。乳首を吸うことは歯その他発音器官の発達を促す。
- 健康上の利点が多いことは例えばAAPの声明にもみられる。
- 母乳栄養は以下のリスクを減らすのに役立つ:
- 糖尿病
- 消化器炎
- 下痢
- 気管支喘息
- アレルギー
- 尿路感染症
- 胸部の感染症
- 耳感染症
- 肥満
- 注意欠陥多動性障害 (ADHD)
近年の研究によると、授乳で育った子供の知能指数の平均は、そうでなかった子供より高かった。
皮膚炎と母乳栄養に関する研究では、玉虫色の結果が得られた。母乳栄養で皮膚炎が減ったという報告もあれば、ドイツの研究結果では母乳栄養は親の社会的地位の高さ及び皮膚炎の多さと関連し、子供の皮膚炎のリスクを増すという。
DATE : 2007/03/09 (Fri)
乳首を吸うと反射的に母乳が出る(射乳反射)。この反射はオキシトシンというホルモンによって起る。乳頭が刺激されると下垂体後葉よりのオキシトシン分泌が増加する。オキシトシンは乳腺の筋上皮細胞を収縮させ、乳汁を排出する。母乳が出る時の感覚は人によりけりで、うずく感じがする人もいるらしい。
この反射は特に初期の内は安定しない。子供をあやす情景を思い浮かべたり、子供の声(他人の子でも)を聞いたりすると、反射が亢進し、不必要に母乳 を漏らしてしまったり、本番の授乳の際に母乳の出が足りなくなったりすることがある。しかしながら、授乳を始めて2週間もすると反射は安定する。母親がス トレスや精神的な不安に晒されると、母乳の出に影響し、授乳がたいへん困難になる。
射乳反射が減弱する原因:
- 乳頭の傷、傷み。
- 子供からの隔離。
- 乳房手術の既往。
母乳の出が悪い場合には、射乳反射を助ける方法がある。たとえば:
- なじみのある落ち着いた快適な場所での授乳。
- 乳房や背中のマッサージ。
- タオル・シャワー等で乳房をあたためる。
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- プロゲステロン
- エストロゲン
- 卵胞刺激ホルモン (FSH)
- 黄体形成ホルモン (LH)
- プロラクチン
- オキシトシン
- ヒト胎盤性ラクトゲン (HPL)
妊娠5ないし6ヵ月になると、乳房は乳汁を生成し分泌できるようになる。出産まぢかには、黄色を帯びた初乳(コロストルム、コロストラム、colostrum)を分泌するようになる。これが新生児の飲む最初の母乳である。
初乳には重要な母親由来の抗体が含まれ、子供自身の免疫系が発達するまで感染防御についての一時的な繋ぎとなる。また、後に分泌される乳汁に比べ、免疫力を高める作用がある核酸類の含有量が高いほか、タンパク質含量が高く、脂質と糖質が少ない。
乳汁成分の成熟は子供が乳首を吸うことが刺激になっておこり、出産後3-4日すると脂質及び糖質が増えてくる。
初乳が出た後は、乳汁は子供の必要量分泌されるようになる。つまり、子供が母乳を欲しがる頻度と量によってコントロールされる。授乳アドバイザーによっては、母乳づくりが維持されるとして4時間に一度は授乳すること勧めている。
母乳の性質は完全には解明されていないが、含まれる栄養素は 比較的一定しており、それらは母親が食事として摂取したものから得られる。食事が不適切であれば、母親の身体そのものから得られる。水と脂質との比率は食 事と環境によって左右される。最初に分泌される母乳は水分含量が多く、脂質含量が少なく、糖質が多い。授乳が進行するにつれ(乳房が空に近くなるにつれ) 脂質含量が増える。
母乳の合成は常に行われているので、乳房が完全に「から」になることはない。