DATE : 2007/03/09 (Fri)
先進国ではあまり知られていないことだが、妊娠したことのない女性も母乳を分泌することができ、したがって授乳することもできる。これを induced lactation (誘導された乳汁分泌)と呼ぶ。以前乳汁分泌のみられた女性の場合は relactate (乳汁の再分泌)と呼ぶ。搾乳器でも、実際にしゃぶってもいいのだが、乳首を授乳時と同様に刺激し続けると、母乳の合成が始まり、授乳が可能になる。これ が一旦成立してしまえば、必要に応じた量の母乳が出るようになる。養子をもらった母親も、最初のうちは母乳以外の補助が必要になるが、結局このようにして母乳栄養が可能になる。誘導された母乳も妊娠で出る母乳も成分にはほとんどまたは全く差がないと考えられている。男性が乳汁分泌することすらある。
疾患としての妊娠を伴わない乳汁分泌には、プロラクチンの分泌過剰によるものがある。乳汁分泌、下垂体性無月経(女性)、インポテンツや女性化乳房(男性)を主な症候とする。下垂体の腫瘍(プロラクチン産生下垂体腺腫、プロラクチノーマ)が最も多い原因である。
DATE : 2007/03/09 (Fri)
一旦離乳が成功すると、もう母乳の出番はなくなり、離乳食その他固形の食品で全ての栄養をまかなうようになる。ほとんどの哺乳類は離乳の末期にラクターゼの分泌が止まり、乳糖不耐症の状態になる(乳製品をうけつけない。無理して飲むと下痢をする)。突然変異の結果、多くのヒトの場合、生涯ラクターゼの分泌が続き、離乳後も乳製品を摂取することができる。ほとんどの場合、それは家畜の乳から作ったものである。
DATE : 2007/03/09 (Fri)
場合によっては授乳が痛みを伴う場合がある。テクニック不足によるものは通常しばらくすると改善される。乳管が閉塞すると、乳房の充血や炎症が起るが、その際はマッサージを行うと同時に、むしろ積極的に問題のある側の乳房を吸わせ、症状が収まるまでできるだけ空にしておくことが良いとされている。乳首にカンジダ症がある場合も痛い。授乳時間を制限しても痛みは防止できない。
紅毛碧眼の白人は乳首の割れをもっとも経験しやすいといわれているが、赤ん坊を抱く姿勢が悪いと、誰にでも起こりうることである。赤ん坊がまだ上手 に乳房にしゃぶりつかせたり乳房を離したりするのができない場合も、舌や吸引によって乳首の傷みが起こりうる。吸うのをやめさせる場合は、赤ん坊が乳房を 離した隙をみて、唇のところに指を入れるか、静かに乳首を押し下げる。Nursing Padやきついブラは乳房や乳首の痛みの原因になりうる。ヘアードライヤー、サンライト、石鹸、アルコール、香水、脱臭剤、ヘアースプレー、ボディパウ ダー、搾乳器の誤用なども原因となりうる。哺乳瓶を使ったりニップルシールド(乳首保護具)を使ったりしても赤ん坊の吸い方が変わってしまう。
乳首の保護に医療用のラノリン(羊の皮膚や毛に含まれる高級脂肪酸及び高級アルコールのエステルの混合物。)を用いる母親もいる。Lansinohの名でLa Leche League Internationalが授乳中の母親向けに医療用精製ラノリンクリームを販売しているし、日本薬局方の第二部にも「加水ラノリン」が収載されている。自分自身の母乳を搾って、それを乳首に塗るのも保護になる。6週間も授乳をすれば、母子共にテクニックが上達しこれらの問題は解消に向かう。乳首の痛みが耐え切れない場合は、搾乳によって母乳栄養を継続することもできる。
DATE : 2007/03/09 (Fri)
授乳は自然な行為に見えるが、上手に授乳するにはそれなりのテクニックが必要である。授乳がうまくいかない主な理由は赤ん坊の抱き方で、抱き方が悪 いと乳首や乳房をいためやすい。赤ん坊の頬を軽く押して乳首を口につけると、赤ん坊は唇を開き乳首の側を向く。
そこで乳首と乳輪が赤ん坊の口一杯になるく らいに含ませる。そうすると乳首は赤ん坊の咽の奥に当たるはずである。この体勢をつくることをlatching onという。陥没乳頭、扁平乳頭の場合はマッサージによって赤ん坊がしゃぶりつけるだけの余地をつくりだせる。普通のブラジャーより乳首を出しやすい「授 乳用ブラ」を使う女性が多い。
数分たつと、あるいは十分長く飲んだ後、赤ん坊は乳首を離そうとする。そのまま同じ乳房から飲み続けることもあるし、もう一方の乳房を与えてもよ い。乳腺が空になっていくにつれ、脂質含有量が増える。時間制限を行ったり、すぐ次の乳房に移らせたりしないで、飲み始めた乳房が空になるまで飲ませてよ い。
授乳時間はさまざまである。その長短に関わらず、授乳している女性が快適な状態にあることは重要である。
- 直立 : 背筋を延ばした授乳法。
- モバイル : だっこバンド等で赤ん坊を支えたまま授乳する(おぶいひもでは無理だろう)。家事その他をしながら授乳できる。
- 寝たまま : 夜間の授乳、帝王切開後の授乳に適す。
- 背もたれ型 : 少し上体を起こす。タンデム授乳に極めて便利。
- 添い寝型 : 赤ん坊を母親の横に置く。
- 四つん這い : 子供の上に四つん這いになる。通常は勧められない。
授乳中に赤ん坊を抱く方法にはいろいろあり、母親の快適さと子供の好みで選ばれる。例えば、片側の乳房の方を選り好みする子もいる。ほとんどの女性 はだっこスタイル(Cradling Position)で授乳している。子供の身長、母親の体格によって、子供を縦に抱く(縦抱き)も横に抱く(横抱き)こともある。
- だっこスタイル
- 順抱き : 母親は背中を延ばし、腹部の前に腕を水平に出す。その肘の内側で子供の頭を支える。お腹とお腹が触れる格好である。
- 逆抱き : 上記同様だが、子供の向きが逆になり、頭を肘ではなく手で支える。
- ラグビー型 : ラグビーの球を抱えるように、真直ぐ座り、腕と両手で子供を支える。両手の中に頭が入る。
- 這い上がり型 : 母親は仰向けになり、その上に子供をうつぶせに、お腹とお腹がくっつくようにする。授乳困難な子供のためになる。
タンデム授乳の場合、一方の乳房から他方へ赤ん坊を抱きかえることができないので腕が疲れやすく、特に子供が成長するとますますやっかいなことになる。サポート用の枕を用意する母親が多い。好まれるスタイルは:
- 二重だっこ型(Double cradle hold)
- 二重把握型(Double clutch hold)
- 一人はだっこ、一人はつかむ型(One clutched baby and one cradled baby)
- 寝たまま型